to Albany
カンガルー。
オーストラリア大陸ドライブの天敵である。
カンガルー出没注意の看板が現れると、僕は極度に緊張する。自らカンガルーを轢いたこともなければ車の前に飛び出してこられた経験もないけれど、とにかく怖い。話を聞くと死亡事故 も多数報告されている。
またレンタカーであることも理由の一つだ。傷つけてしまえば巨額の修理費を支払わなければならないことになる。
カンガルー出没注意の看板が出現し、そんなことを考えている中、親子で轢かれているカンガルーの死体を目にした。
僕は気分が悪くなった。
せっかく生まれて来たのに、どうして車になんか轢かれて死ななければならないのだろう、と。
自分で見る前までは、カンガルーの死体を見つけたら写真を撮ろう、なんて軽い気持ちでいた。でも、実際に死体を目にすると、そんな自分に対する気持ちの悪さが胸の中に生じ、一刻も早くその場を立ち去りたいという思いに駆られ、カメラを取り出すことすらできなかった。
車に戻った僕は逃げるようにしてスピードを上げその場を後にした。